株式会社林原様
事務所棟 新築工事

建築設計 × 工事監理

甘味料トレハロースなどの食品原料や医薬品の開発製造で知られる、岡山市の株式会社林原(2024年4月よりナガセヴィータ株式会社)様。2021年に、会社の“顔”となる事務所棟を新設されました。その設計から監理まで一連の作業を担当した2人の建築士が、同プロジェクトへの取り組みや乗り越えた困難について語り合います。

プロジェクトメンバー

※所属は2024年9月時点のものです。

建築設計部 主任

冨岡 智子Tomoko Tomioka

2018年入社

建築設計部 係長

伊藤 良悟Ryogo Ito

2016年入社

プロジェクトの流れ

  • お問い合わせ
  • ヒアリング
  • 現地調査・測量
  • 開発許可申請
  • 建築設計
  • 着工
  • 竣工
  • アフターメンテナンス

多様な機能を持つ、
企業の“顔”となる事務所棟を

――どのようなプロジェクトだったのかを教えてください。

冨岡

林原様から「工場に隣接する敷地に、事務所棟を新設したい」というご依頼を受け、計画設計・書類申請・監理を担当しました。今回ご相談いただいた事務所棟は、事務機能だけでなく、研究室や社員食堂などの設備も備えた3階建ての建物でした。建設予定地が複数の工場の入口付近に位置するため、お客様は会社の“顔”となる建物を希望されていました。

伊藤

プロジェクトの主担当だった冨岡は、本件と同時期に別案件を抱えていました。そのため、基本は冨岡が先方との打ち合わせを担当し、それ以外の業務に関しては私がサポート役を務めました。私の業務は図面作成のほか、行政との法的な協議や手続きでした。また、お客様に完成イメージをつかんでいただくため、3Dイメージの作成なども行いました。

冨岡

事務所や研究室などに必要となる機能や、室内の基本的なレイアウトは、あらかじめお客様からご提示いただきました。ただ、外観については、まだ具体的な希望を持たれていなかったため、どのようなイメージがよいか何度も打ち合わせしましたね。

伊藤

作成した3Dイメージの提案をご確認いただいた上で、それに対してお客様からご意見・ご要望をいただくようにしていました。そして、その内容を冨岡や上司、同僚など複数人で検討した後、再度お客様にご提案するという流れを繰り返し行い、少しずつ案件を進めていきました。

さまざまな制約の中で、
トライアンドエラーを繰り返した

――プロジェクトを進める上で苦労したことはありましたか?

冨岡

外壁には、スタイリッシュな見た目で、断熱材が入っている金属パネルを用いました。他の工場の外装にも使われている2色を選び、横長のボーダーのように配置しようと決めたんです。ただ、法的規制を満たすためにはそこに窓も設置する必要があり、実用性とかっこいいデザイン性の両方をかなえることに苦労しました。

伊藤

設計時は、外壁パネルを並べ、その間にぴったり収まるように窓のサイズや割り付けを考えました。その際、途中でパネル配置を1枚誤っていたことに気付き、最初からやり直さなければならなくなったこともありました。また、外観上問題がなくても、室内から見ると不自然な位置に窓があるといったことも多かったため、常にトライアンドエラーの連続でしたね。

冨岡

そうですね。あとは、お客様のご要望とご予算との両立も難しかったです。当初、食堂は天井板を張らない開放的な空間にしたいという話があったのですが、検討したところ、それにはお客様が想像されるより予算が掛かってしまうと分かりました。加えて、食堂は広いため、むき出しの天井にすると空調が効きにくいことも想定されたんです。

伊藤

お客様にはそれらのデメリットをご説明しました。ただ、その希望を完全に見送ったわけではありません。今回は、一部だけ天井板を張らない仕様にすれば、開放感・空調ともに効果的だと考えられたため、範囲を絞って実装するという代替案もご提案しました。

この物件ならではの設備も多数。
未経験の申請や協議も行った

――本プロジェクトには、他と違う点はありましたか?

冨岡

林原様は事務所棟の中にさまざまな機能が含まれています。そのため、研究部門や事務担当、食堂、広報担当など各部門の担当者がそれぞれ分かれており、毎回打ち合わせのメンバーが変わりました。意思疎通を図るのが難しかったですね。

伊藤

また、行政への届出方法や、注意するべき法律・規制にどのようなものがあるかなどを確認しなければならなかったことも、この物件だからこそ必要だった業務だと思います。例えば、お客様の研究室では実験用に特殊なガスを使用するので、社内で法律や規制に詳しい者に確認し、さらに消防や行政とも協議しました。

冨岡

加えて、薬品を使うのでダクトをどうするかという問題もありましたよね。研究室には外部の空気が流入しづらくなるように、室内の気圧低下を防ぐための空調を引き込んだりしました。

1人では視野が狭くなるため、
お互いにカバーし合うことが必要

――本プロジェクトで学んだ点や今後に生かせる点はありましたか?

冨岡

建築や設計に際してまだまだ勉強不足の部分は多いですし、初めての経験から学ぶことは多いと改めて感じましたね。例えば、今回は社屋全体の植栽も当社で担当したのですが、実は今まであまり対応したことのない領域だったため、最初に植物の特性についてリサーチをしました。そのうえで、景観向上や視線対策など使用用途に応じてどの植物を選ぶべきかを検討しました。

伊藤

二人で丁寧にリサーチを行いつつ、互いの知識を共有し合うことで、最適な植物を選ぶことができたと実感しています。

冨岡

そうですね。私も伊藤のフォローがないと行き詰まっていたであろう部分もたくさんありました。普段は案件を1人で担当しますが、その際は自分がよいと思ったデザインでも、社内では不評だったり思い違いを指摘されたりすることがあります。法的規制などに関しても1人でやっていると誤りに気付きにくいですよね。

伊藤

1人では視野がどうしても狭くなりますね。今回を通じて、自分以外の社員と一緒にプロジェクトを担当するメリットを再認識しました。

冨岡

今後はチーム体制を導入して案件を進められないか検討したいですね。今思い返せば反省点も多いですが、建物が竣工し、計画が形になったときの喜びはひとしおでした。

伊藤

トライアンドエラーを繰り返した作業も、完成後には無駄でなかったと感じました。試行錯誤や協議を重ねて決めたものが一つ一つ積み重なって、最終的にはお客様にも満足していただける建物になったと思います。

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